はじめに
「これは恋愛小説です。最後の2行を読むまでは——。」
この挑発的なコピーで話題になったのが、乾くるみの異色ミステリ『イニシエーション・ラブ』(文春文庫)です。
甘酸っぱい80年代の恋愛ドラマのように始まりながら、
読み終えた瞬間に全てがひっくり返る、超絶技巧型トリックミステリ。
発売以来、読者の間で「必ず2回読みたくなる本」として語り継がれる1冊です。
あらすじ(ネタバレなし)
物語は2部構成になっています。
⬛ 第一部「Side-A」
舞台は1980年代後半。大学4年生の主人公・鈴木は、友人に誘われて行った合コンで出会った真っ直ぐな女性・成岡繭子と交際をスタート。
恋愛初心者の鈴木は、徐々に繭子との距離を縮めていきます。
どこにでもあるような青春ラブストーリー…と思いきや——。
⬛ 第二部「Side-B」
社会人になった鈴木は、別の地で仕事を始め、新たな人間関係の中で変わっていきます。
その中で、彼と繭子の関係にも少しずつ変化が。
そして、最後の最後、たった一文によって、物語のすべてが覆されるのです。
この作品の魅力
🎭1. 見事な“叙述トリック”
『イニシエーション・ラブ』の最大の魅力は、ラストで明かされる叙述トリック。
小説全体が巧妙な仕掛けで成り立っており、最後にそれを知ったとき、読者は「えっ!?」「最初から騙されてた!」と驚くはずです。
「すべては書かれていた」のに気づかなかった悔しさ、そして納得の構成。
ミステリとしての完成度は非常に高いです。
🧠2. 2度読みたくなる構造
ラストを知ってから読み返すと、すべての言動や描写に意味があることに気づきます。
最初から伏線だらけだったのか!という驚きは、一度しか味わえない「特権的体験」です。
💿3. 昭和の空気感とノスタルジー
舞台はバブル期の静岡と東京。
80年代の音楽やファッション、デートスポットなどがリアルに描かれており、当時を知る人には懐かしく、知らない世代には新鮮に感じられるでしょう。
こんな人におすすめ
- 恋愛小説とミステリ、両方楽しみたい人
- 最後に驚きたい人
- 読んだあとに「誰かと語り合いたくなる」作品が好きな人
- 東野圭吾『白夜行』や道尾秀介が好きな方
書誌情報
- タイトル:『イニシエーション・ラブ』
- 著者:乾くるみ
- 出版社:文春文庫
- 初版:2007年(文庫)
- 映画化:2015年(主演:松田翔太、前田敦子)
おわりに
この本は、「恋愛小説」というジャンルの皮をかぶった極上のミステリです。
読後、すぐにもう一度読み返したくなる不思議な体験が待っています。
ぜひ、「最後の2行」であなた自身の目で真相を確かめてください。
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