はじめに
「本格ミステリ」と聞くと、あなたはどんな物語を思い浮かべますか?
密室、奇妙な館、クセのある登場人物たち、そして読者を唸らせるロジック――。
今回ご紹介するのは、まさにそんな「本格」の醍醐味が凝縮された1冊。
綾辻行人による館シリーズ第1作『十角館の殺人』(講談社文庫)です。
1987年の刊行以来、多くのミステリファンを魅了し続け、「新本格ミステリ」というジャンルを築いた記念碑的作品。
これからミステリを読みたいという方にも、自信を持っておすすめできる一冊です。
あらすじ(ネタバレなし)
舞台は、十角形の奇妙な建築「十角館」が建つ孤島・角島。
ミステリ研究会に所属する大学生たちが、合宿としてこの無人島を訪れます。
彼らはそれぞれ「エラリイ」「ヴァン」「アガサ」など、有名なミステリ作家の名をあだ名として名乗る、いわば推理小説マニアたち。
しかし、楽しいはずの合宿が、やがて連続殺人事件へと姿を変えていきます。
同時進行で、本土に残った一人の男が、角島にまつわる過去の事件について調べ始めたことで、思いもよらぬ真相が浮かび上がる――。
この作品の魅力
🎲1. 読者への挑戦状
『十角館の殺人』は、「読者への挑戦状」の精神に満ちた本格推理小説です。
犯人の手がかりはすべて、物語の中に用意されています。
読者が登場人物と同じ立場で事件に挑める、フェアプレイ精神にあふれた構成が魅力です。
🏰2. 館という閉ざされた舞台
舞台となる「十角館」は、異様な建築でありながらどこか魅力的。
外部と遮断された孤島という状況が、緊張感と不安を高め、読者を物語の世界へと引き込みます。
💥3. ミステリ史に残る“あの一行”
本作が今も語り継がれる最大の理由は、あの衝撃的な一文にあります。
それまで読んできた世界が一瞬でひっくり返るような読書体験は、まさに「本格ミステリの醍醐味」。
ネタバレ厳禁!だからこそ、自分の目で読んで確かめてほしい一冊です。
綾辻行人と「館シリーズ」
著者の綾辻行人(あやつじ・ゆきと)は、本作でデビュー。
この『十角館の殺人』を皮切りに、「○○館の殺人」というフォーマットで構成される館シリーズを展開し、日本のミステリ界に一大旋風を巻き起こしました。
シリーズはそれぞれ独立した物語で、どこから読んでも楽しめますが、最初に『十角館』を読むとより深く味わえます。
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