はじめに
「論理で殺人を解く」
そんなミステリを探しているなら、**森博嗣(もり・ひろし)**のデビュー作『すべてがFになる』(講談社文庫)は絶対に見逃せません。
本作は、工学部助教授・犀川創平と大学生・西之園萌絵が活躍するS&Mシリーズの第1作。
科学・数学・プログラミングなど、理系的な知識と論理で組み立てられたこの作品は、1996年に登場するや、ミステリ界に鮮烈な印象を残しました。
あらすじ(ネタバレなし)
舞台は、孤島に建てられた最新鋭の研究施設「喜多研究所」。
犀川創平と教え子の西之園萌絵は、天才プログラマー・真賀田四季博士と面会するため、この研究所を訪れます。
しかしその直後、完全に管理された密室から、猟奇的な死体が発見される――。
なぜ、密室で殺人が可能だったのか?
犯人は誰で、どんなトリックを用いたのか?
すべての謎を貫くキーワード、それが「F」なのです。
この作品の魅力
🔬1. 理系的発想で解くミステリ
森博嗣自身が工学博士ということもあり、作中に登場する理系の知識や論理的思考はリアルで説得力抜群。
論理を積み重ねて事件を解き明かすスタイルは、まるで学術論文を読むような知的快感があります。
登場するトリックも、プログラミングや情報工学を応用した高度なもので、理系読者なら思わずニヤリとする場面が多数。
🧑🏫2. 個性的な名コンビ:犀川&萌絵
無口で理知的な助教授・犀川と、明晰で勝気な女子大生・萌絵。
この二人の会話のテンポと距離感は、本作の魅力のひとつ。
恋愛要素は抑えめながら、知的なやりとりの中に独特の緊張感と関係性がにじみ出ます。
🧩3. 読み終えた後に“静かな衝撃”
この作品は派手な仕掛けではなく、じわじわと真相が迫ってくる「静かな衝撃」が特徴です。
結末の一言や描写で読者の視点が変わる構成は、森博嗣作品の真骨頂。
こんな人におすすめ
- ロジック重視の本格ミステリが好き
- コンピュータや理系分野に興味がある
- 会話の妙を楽しみたい
- 綾辻行人や島田荘司を読んだことがある人
- 長く続くシリーズをじっくり読みたい人
書誌情報
- タイトル:『すべてがFになる THE PERFECT INSIDER』
- 著者:森博嗣
- 出版社:講談社文庫
- 初版:1998年(単行本は1996年)
- シリーズ:S&Mシリーズ第1作(全10作)
- 映像化:2014年にドラマ化(主演:綾野剛、武井咲)
おわりに
『すべてがFになる』は、理系的な知識と本格ミステリの融合に成功した、革新的な作品です。
読めば読むほど、静かに、しかし確実にハマっていく知的な世界が待っています。
まだ読んだことがない方は、ぜひ“F”の意味をあなた自身で確かめてみてください。
コメント